TrPower0901改3


電流帰還型パワーアンプの製作


TrPower0901改3は当サイトのフラグシップアンプの座を TrPower0905に譲る形となった。
TrPower0901 改3は 2009.11.02 時点で最高音質のアンプの一つだが、いかんせん出力が 8Wx2(8Ω) しかなく高能率のスピーカーと組み合わせない限りリビングでの使用は難しく、通常のスピーカーとの組み合わせでは卓上オーディオくらいにしか使えない。
さらに大出力のアンプが必要な人はTrPower0905のページを見てほしい。

[1]回路図

こ こに回路図を示す。(2009.08.08の最 新回路図はこれ
ダイヤモンドバッファにバイポーラトランジスタ(2SA1931,2SC4881)を使用したカレントミラー型バッファをつけた回路だ。2つの 2SA1921と2つの2SC4881をそれぞれ熱結合することによりエミッタ抵抗レス化を実現している。
電流帰還型アンプで増幅率20dB・出力8Wx2となっている。

この回路に至るまでの経過については TrPower0901 のページTrPower0901 改2のページを 見てほしい。

[2]製作(写真)

1uHのコイルは 0.8mmφのスズめっき線を単三電池に10回巻きつけてつくった。コイルが伸びないように
コイルの中に10Ωの抵抗をいれて両端を半田付けしてはいできあがり。コイルの作り方は長岡係数で検索すると出てくる。

(1)外観

(2)内部


[3]シュミレーション

(0)ソフト&モデル 
Spiceソフト LT-Spice 4.02v
Spiceモデル
トランジスタ
2SA1015, 2SA2815    toragi.lib を使い Bf=250 を指定
2SA1931, 2SC4881   phi_bjt.lib の QBD136/PLP と QBD135-10/PLP で代用
コンデンサ
KMG50V3300uF, OS-CON(20000uF16V)   Nichicon UPR332MRH のモデルを使用
UUR1E471MN  Panasonic ECA1EFQ471 のモデルを使用
10uf  NIchicon UPR1V100MAH のモデルを使用
ECQE2 225KF            理想コンデンサのモデルを使用
Bi-polar MUSE(47uF)   理想コンデンサのモデルを使用
AMZ50V104K、100p、 理想コンデンサのモデルを使用
 
方法
Gear 法を用いた

(1)クローズドループゲイン
ク ローズドループゲインは、DCサーボをはずして、1Vp-p入力でシュミレートしたところ 100Hz, 1kHz, 10kHz で 21dB だった(以下にグラフを示す。縦軸+6dBが実際のゲインだ)。

TrPower0901改3 のクローズドループゲイン
縦軸+6dB が実際のゲイン。

(2)オープンループゲイン
オー プンループゲインは、DCサーボをはずして、帰還抵抗を除いて  0.02mVpp入力でシュミレートしたところ、100 Hz で 110dB, 1kHz で 94dB, 10kHz 75dB だった(以下にグラフを示す。縦軸+100dBが実際のゲインだ)。 NFB 量は 100Hzで 89dB, 1kHzで 73dB, 10kHzで 54dB ということになる。

TrPower0901改3 のオープンループゲイン
縦軸+100dB が実際のゲイン。

(3)THD
入力電圧 1.2Vpp, 100Hz, 1kHz 10kHz 100kHz でTHDを調べてみた。
toragi.lib の 2SCA1015 2SC1815のモデルが出来すぎだという話もあったので、 BC557C,547Cのモデルでもやってみた。

             LT-SpiceによるTrPower0901改3のTHD(%)

100Hz 1kHz 10kHz 100kHz
2SA1015,2SC1815 0.00074% 0.00044% 0.0044% 0.041%
BC557C,BC547C 0.00096% 0.00078% 0.0045% 0.041%
入力 1.2Vp-p

[4]性能

(0)測定方法
1)周波数特性
a)機材
    サウンドカード Sound Blaster Audigy2
    発振器ソフト WaveGene Ver. 1.40
  サウンドカードベンチマークソフト Right Mark Audio Analyzer 6.2.2
  交流電圧測定 秋月通商のテスター P-10
    ダミー抵抗 8Ω(セメント抵抗)
b)測定法
WaveGeneで1kHzの正弦波を発生させて アンプに入力した。
アンプの出力ダミー抵抗につなぎ出力電圧を 2.83 V(1W) にして 10 kΩ の可変抵抗で分割して47Ωの抵抗の両端に加えた後、サウンドカードに接続した。
この状態で Right Mark Audio Analyzer で測定した。

2)歪率
a)機材
    サウンドカード Sound Blaster Audigy2
    発振器ソフト WaveGene Ver. 1.40
    オシロ+FFTソフト WaveSpectra Ver. 1.40
  交流電圧測定 秋月通商のテスター P-10
    ダミー抵抗 8Ω(セメント抵抗)
b)測定法
    率特性カーブを描いてみように書いてある方法に 従った(文献1)。
     サウンドカードの line 入力のノイズを減らすためボリウムのあとに 47 Ωの抵抗を並列にいれた。
  入力を絞るための可変抵抗の操作が困難だったので、PC側でサウンドカードの再生音量を調整した。


(1)周波数特性
こ こに結果を示す。
 20 Hz から 20 kHz までフラットだった。

(2)歪率
a. THD
こ こにグラフを示す。


b. THD+N
通常歪率というと a の THD ではなく THD+N のほうなのだがサウンドカードのノイズが大きいためうまく測れなかった。


(文献)
1.歪率特性カーブを描いてみよう.

(付録)
買い物リスト
買い物リストをここに示す。

(2009.07.09) カップリングコンデンサの交換
2.2u のフィルムコンデンサ ECQV1H225JL2 2個を並列にしてカップリングコンデンサに使うことにした。

(2009.0709)回路図改定 改3-2
(1)220Ωで高周波特性を改善しておきながら 22pFで高周波特性を落とすというやりかたは意味がなかったと反省して、両方ともはずすことにした。
(2)自 分のサイトで、”電 流源で駆動させれた出力バッファをボルテージフォロワとして働かせたいならば、(電圧スイング/電流源のインピーダンス) の1/10以下の電流で出力電圧のフルスイングが得られるように出力バッファの電流増幅率を決める必要がある。”と書いておき ながら改3はこれを守ってなかった。100kΩの抵抗を入れて電流源のインピーダンスを下げた。

             LT-SpiceによるTrPower0901改3-2のTHD(%)

100Hz 1kHz 10kHz 100kHz
2SA1015,2SC1815 0.0012% 0.00075% 0.0022% 0.31%
入力 1.2Vp-p

(2009.07.24)DCサーボの改善
DCサーボにローパスフィルターを入れた。細かいところがいまいち雑だったのがなおった。
回路図をさしかえた。
THD を測定しなおしたのがこ れ

(2009.0731)回路図改定 改3-3
出力スイングを得るための電流は1μV程度と非常に少なく、改3-2での改造のとき足した 100kΩ は必要なくて無駄に歪率を増やしただけだった。100kΩ をとりはずし、位相補償等を見直した。

             LT-SpiceによるTrPower0901改3-3のTHD(%)

100Hz 1kHz 10kHz 100kHz
2SA1015,2SC1815 0.00077% 0.00070% 0.0069% 0.10%
入力 1.2Vp-p

THD を測定しなおしたのがこ れ

(2009.08.08)回路図改定 改3-4
Trpower0905 と比較して、一つ一つの音が劣ってる気がしたので Trpower0905 風に位相補償を変更した。これで Trpower0905 に負けない音になった。

THD を測定しなおしたのがこ れ
高振幅側で 歪率がもちあがってる。これは悪くなっている。。。がく。

(2009.10.08) 100kHz 矩形波応答のシミュレーション結果


8Ω負荷でスルーレート 24V/usec 程度か思ってたより悪いけど合格点だ。

(2009.10.24) 100kHz 矩形波応答のシミュレーション結果2
回路構成にしてはスルーレートが悪かったのは、スピーカーの位相補償回路のせいだった。
位相補償回路をはずした場合の応答もしらべてみた。

8Ω負荷でスルーレート 100V/usc 回路自体は十分高速だ。


(2009.11.01) 電磁波の回り込みの問題
以前よりフィルムコンデンサを使った場合にのみ高音がざらつく感じがあった。これは、ケース内の配置が悪いために入力から高周波の電磁波を拾ってる為らしい。
著者の技術力では、にわかに配置を最適化することはできないので、ダイヤモンド回路の入力の直前に100Ωと100pFのローパスフィルターを入れた。
高周波技術に精通していない読者の方にはこのフィルターを入れることを推奨する。

(2009.11.01) スルーレートの問題
オリジナルの回路では 1uH のコイルのために、スルーレートが 24V/us まで低下してるので、ハイスルーレートを望む方はコイルのインダクタンスを 0.5 uH くらいまで落としたほうがよいだろう。



2009.07.02 sけいし(s_keishi@yahoo.co.jp)
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