スルーレート 100V/usec という数字はどの程度の速さか
[1]スルレートとFPBW
アナログ
アンプの高域再生限界は、周波数帯域とFPBWの小さいほうだ。周波数帯域が大きく十分高い周波数まで増幅できるアンプならばFPBWで高域再生限界が決
定される。FPBWで決定された高域再生限界は立ち上がりの傾斜が1のサインカーブを再生できる限界にすぎないので立ち上がりの急峻な矩形波を再生できる
限界はFPBWよりさらに低い周波数となる。
FPBWの計算式は以下のとおりだ。
FPBW = SR/( 2*π*Vp )
SR=スルーレート
Vp=正弦波の振幅[2]スルーレート 100V/usec のパワーアンプの FPBW とサウンドカードやミキサー内部のアンプの FPBW
サウンドカードやミキサー内部にはオペアンプを使ったアンプが使用されてる。代表的なオペアンプからその FPBW を計算してみよう。
オー
ディオ機器の定番のオペアンプは njm2114 でSR=15V/usecだ。サウンドカードのVpは5V/2=2.5Vだから FPBW =
15V/usec /( 2*3.14*2.5V) = 960 kHz 。ミキサーの Vpは通常15Vだから FPBW = 160
kHz となる。
15W のアンプの Vpは (15W*8Ω )^0.5*1.41 = 15V だから FPBW = 100V/usec /(2*3.14*15) = 1.0 MHz
140Wのアンプの Vpは (140W/8Ω)^0.5*1.41 = 47V だから 320 kHz
機器 | FPBW |
サウンドカード | 960 kHz |
ミキサー | 160 kHz |
15W8ΩPA | 1.0 MHz |
140W8ΩPA | 320 kHz |
100V/usec のパワーアンプは、パワーアンプだけではなく通常のオーディオ機器と比べても十分高速だという結果だ。
これだけ早ければ、再生音のスピード不足はもっぱらスピーカーによって生じてると考えることができるので問題の原因究明が簡単になる。
[2]SRの違いは聴感上どの程度認識できるものなの?(科学的な話ではなく感覚的な話なので注意)
OpPower0902 の経験からすると 8Wのアンプで SR=6V/usec の2068 は不合格で SR 15V/usec の2114 は合格だ。
8W8Ωだと Vp=(8W*8Ω)^0.5x1.41 = 12.4V だから 2068ではFPBW= 77 kHz。 2114 では FPBW = 192 kHz オペアンプ | SR | FPBW |
njm2068 | 6V/usec | 77kHz |
njm2114 | 15V/usec | 192kHz |
著
者が使用してる。モニタースピーカーのパワーアンプ内蔵型タイプ ALESIS monitor ONE active
の内臓アンプは、30W8ΩでSR=19V/usec だ。このFPBWは Vp = 21.8V なので FPBW
= 140 kHz.。
このスピーカーの性能を十分発揮させるにはこの程度のSRがあればいいのだろう。
100kHz~200kHz の間あたりに FPBWの聴感上の分岐点があるようだ。FPBWが100kHzに届いてないアンプはお勧めできない。
信用できるメーカーでカタログに最大出力で100kHzまで増幅できると明記してあるメーカの製品ならば FPBW >100kHz をクリアしてるはずだ。
2009.11.04 sけいし (skeishi@yahoo.co.jp)