PS_5V_14


USBオーディオ用電源フィルター


著者はオーディオインターフェースとして M-AUDIOのTransit USB を使用しているがUSB バスパワーのオーディオインターフェースは USB電源のノイズを受けやすい。
そこで、購入当初(4年ほど前)から電源アダプタから電源を供給している。3端子レギュレータ式の電源器からはじまり、今日までいくつもの回路を試してきた。
今回紹介するのは、現在著者が使用しているもので、自作アンプの細かい音質(質感)の違いにも影響を与えないだけの性能を発揮している物である。かなり オーバースペックな設計で、超高性能を目指したわりに実際の測定結果は十分高性能という程度におさまっている。しかし、耳で聴きながら最高の音質を目指し た結果なので、設計スペックを落として聴感が低下するリスクを犯す必要はないと考えている。
十分役に立つレベルものになったので何台か作り友人に配って使用してもらっているがおおむね好評だ。

[1]設計

回路図をこ こに示す。
2段のアクティブフィルターロードロップでないリニア三端子レギュレータを組み合わせた回路だ。

入力電圧に0.1V(rms)の信号を加えた場合の周波数特性はこれ
全可聴周波数範囲(20-20kHz)で160dB(180-20dB)の減衰率となっている。人間の耳のダイナミックレンジは130dBであるから、どんな爆音のノイズも全く聴こえなくなる設計だ。

出力インピーダンスはこれ
三端子レギュレータの特性がそのまま出てるだけなので特筆すべきところはない。

[2]製作(写真)

(1)外観
PS_5V_14.jpg

(2)注意事項
1.0.1uFはフィルムコンデンサを使いZ0の積層セラミックを使わないこと(C0Hは○、X7Rは△)。
2.音がしない電解コンデンサを使うこと。
3.電流が流れるラインと電圧基準のラインをきっちり分離すること。

[3]性能

ノイズレベル比較表(まとめ)

ノイズレベル
デスクトップUSB電源
1mV
PS_5V_14
3.9μV
秋月スイッチング電源器
15mV

(1)USB電源のノイズ(自作デスクトップ機)
デスクトップUSB端子
最大ピーク -60dB(67.15dB-7.15dB)  1mV


(2)今回のフィルター
フィルタ+秋月電源

最大ピーク -108dB(115.41dB-7.15dB)  3.9uV
三端子レギュレータのノイズレベルは20uV(20kHz)程度なのでピーク測定で3.9uVというのは妥当な数字だ。
(7805のデータシートでは、45uV(100kHz)という数字が書いてある。これは、ノイズがホワイトのノイズの場合20kHzのバンド幅だと1/√5倍の20uV(20kHz)となる。
人間がホワイトノイズに埋まったより低いレベルの信号を聞き取れるのはよく知られてるので、20uV より低い 3.9uV という数字には意味がある。)

以下参考データ
較正用データ(1V(rms) 100kHz)
校正用1V_rms_100Hz
-7.15dB=1V(rms)

測定系のノイズ(測定入力端子ショート)
blank


秋月電源(今回用いていたスイッチング電源)
秋月電源
最大ピーク -36dB(43.61dB-7.15dB)  15mV

[4]コメント

本来、パワーアンプの設計・製作が趣味なので、電源器は自分が使う為だけで公開する気はなかったが、入力されるノイズのレベルも調査・想定していないよう な設計の回路に高級部品を使ってみましたみたいな作例しかないみたいなので公開することにした(性能不足でもちょっとでも良くなれば自己満足にはなるんだ ろうけど)。

パワーアンプを作りなれてる方なら簡単に作れると思うが、慣れてない方が作ると性能が出ない可能性がある。いずれプリント基板パターンを書いて誰でも作れるようにしたい。

忙しくて作る暇がない方のために5台ほどつくって、オークションに出品する予定だ。
(著者ではなく、lmms_two氏が出品するので注意)



2011.11.17 追記(細かい数字の話)
ノイズレベルだの何dBだといっても、ピンとこない人も多いとおもう。著者もオーディオを始めたころはそうだった。そこで少し説明する。

ラインレベルの信号は、最大音量がだいたい0dBuとなるように録音される。0dBu=0.775mV
ということはCD録音の最小音量はだいたい 0dBu-96dB = -96dBuとなる(ダイナミックレンジ96dB)。12.3uV

ボリウムを絞って出力を電力で1/10(-10dB)にした場合(10Wのパワーアンプでも1Wくらいの出力で聴くのが普通だ)。ラインレベルの最小信号は 106dBu  3.89uVになる。

プリアンプ DACなどの機器のラインレベル信号に、電源電源電圧が与える変動を電源除去比という、これは機器によって大きく異なるが悪くても-70dBくらいであから、電源変動を -106dBu +70dB = 36 dBu(12.9mV)以下に抑えればよい。

今回の測定でも USB電源のノイズレベルは、1mVで12.9mVより一桁小さく、USB電源ノイズの影響は、機器内部の信号には全く現れないはずである。

ここまでが、常識的な内容だ、こういう見積もりで通常の機器は設計されてる

しかし、実際に機器を使うとノイズが原因としか考えられない音の荒さがあらわれることがある。これはたぶん、2つの問題に原因するとおもう。
(1)カタログに載ってる電源除去比の値は、あくまで 1kHz等のスポットの値であって20Hz~20kHz全体を保障してるものではないこと。
(バーブラウンのオペアンプのデータシートには電源除去比の周波数依存性のグラフが載ってるものもある)。
(2)電圧除去比がカタログに載ってない機器もあり、そういう機器の中には70dBの電圧除去比がとれてないものがあると予想される。

今回のたくらみは、電源ノイズがそのままラインレベルに乗る状況(機器の電源電圧除去比が0dB)でも 電源変動を 106dBu(3.89uV)以下にしとけば問題ないでしょ!っ ていう話だったのだ。 今回、スポットの値でなんとか3.9uVを達成しているが、問題が無いといいきるには全動作範囲で確認しないといけない、全動作範 囲で動作確認するのは大変でもスポットの値をあと一桁くらい下げたほうがいいだろう。ハイエンドのメーカーには実際に一桁下のノイズレベルを謳ってる電源 を作ってるメーカーもある。彼らは無駄に高性能な物を作ってるのではない。
もちろん機器の電源除去比が十分ならこんな高性能な電源は全く無意味なのだが。



2011.10.29 sけいし (s_keishi@yahoo.co.jp)
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