三角波発生回路のPWM変換器としての利用とD級アンプとしての利用


三角波発生器型PWM変換器の提案。
三角波発生回路はD級アンプそのものだった

このページのデータは実測値ではなくシミュレータの出力である。


[1]三角波発生回路

上図がコンパレータとオペアンプによる積分器を組み合わせた三角波発生回路だ。この回路は良く見かける。
この回路の詳しい動作についてはSeiichi Inoue.氏の”三角波発振器の動作説明”あたりを参考にして欲しい。
電源電圧を調整してフルスイングを±2Vにしてある。周波数は250Hzだ。
sqの位置から矩形波がtriの位置から三角波が取り出せる。出力波形は下のようになる。



[2]三角波発生回路によるPWM変換

三角波発生回路のオペアンプの正端子にDC電圧を加えると矩形波のデューティ比と全体の振動数が変化する。
それが上のの回路だ。
V2を 1V(50%)  1.8V(90%) と変化させた場合の出力を下に示す。
1V(50%) 

PWM変調されている。長い幅は2倍短い幅は1/3倍されている。周期は1.17倍になる。

1.8V(90%)

デューティ100%の極限でも短い幅はデューティ50%の時の幅の1/2の大きさがある。
デューティ100%の極限では長い幅が無限大に広がる。
固定周波数型のPWM変換では、短い幅が狭くなりすぎて。矩形波の形状が維持できなくなる問題があるがこのPWM変換にはそれがない。

ピーク値1Vの1.25Hzの交流を加えた結果が下図だ。


綺麗にPWM変調されている。
この波形を20波(8秒)とりFFTをかけたものが下図だ。

D級アンプとして使えそうだ。



[3]D級アンプの回路(案)



図中のバッファやローパスフィルタの記号は、回路図ではないことに注意。このまま作らないこと。

1.三角波発生器の回路図を左右反転させる。
2.コンパレータにバッファーつけて一旦大出力とした後抵抗分割で元の電圧まで戻したものを新しいコンパレータとする。
3.大出力の部分からローパスフィルターを通してスピーカーに繋ぐ。
以上でD級アンプの完成だ。


<コメント>
三角波発生器自体がD級アンプだという発想は単純だけどこの発想に辿り着くまではそう単純ではなかった。三角波発生器を信号源に利用したD級アンプの フィードバック回路を工夫しているうちに負帰還をかけたD級アンプの回路が三角波発生器にそっくりなことに気づくまでかなり時間がかかった。

D級アンプの回路を考えるようになるまでは、デジタルアンプの宣伝文句に惑わされて何でもデジタルでやっちゃうすごいアンプかと思っていた。普通のD級アンプはデジタルなんか使ってないアナログアンプである事を知り”著者でもやれるかな?”と設計をはじめた。回路図を考えてるうちに片山泰男氏の”1 bit アンプ、原理と製作”の解説にあるように、スイッチングで増幅できるようにするため入力に雑音を混入したアンプであることがうすうすわかってきた。この次は出力された雑音を取り除くのに苦労するのだろう。


<2010.09.18 追記> いままでのスイッチングアンプとの関係

進化するパワーアンプの掲示板でコンパレータと積分器の構成は今までのスイッチングアンプでも同じだと指摘されたので、今までのアンプとの関係をまとめる。
[1]積分器をアクティブ型からパッシブ型にかえる

電流量を一定とするためにC7の電圧を電源電圧の1/10程度に抑えることになる。

[2]信号注入位置を変更する

triの出力は、三角波ではなく入力信号を反転させた波形に三角波が乗ったものになる。
これはC7の出力が大きく変動しているということでR10を流れる電流が変化し正確な積分の妨げになる。


[3]反転増幅器の位置をコンパレータの後ろにもってくる

これで昔からある1ビットアンプの回路になった。
三角波発生器型D級アンプは、積分器の精度を除いてこれと全く同じ動作をする。


こうしてみると、三角波発生器型D級アンプのアドバンテージは
1.アクティブ型積分器を使用している。
2.三角波の乗ったサイン波が出ない。
の2点のようだ。
両者は、出力信号の正確な積分値を得るために必要で、歪みの減少に効果がある。


2010.0916. sけいし(skeishi@yahoo.co.jp)

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