kemoi2_vr



cmoyアンプにヒントを得たヘッドフォンアンプ


[1]回路図

回路図をこ こに示す。

cmoyアンプ風に電源電圧をコンデンサで分割する。分割抵抗に流れる電流がもったいないので、信号増幅のオペアンプが直流時にスプリッターとして動作する設計になっている。

cmoyアンプのクロストークの問題を解決するには電源系統を分離するのが王道だが、電池のあとに電源フィルタを一段いれることである程度の改善があったので電源の分離まではしていない。

電源アダプタとして、安価なスイッチング電源アダプタを使っても電池使用時と同等の音質になるように電源フィルターがついている。すでにcmoyアンプを持ってる人はこのフィルターをつけるだけで、電源アダプタで使えるようになる。

ボリウムにDC成分が流れるのを防ぐため2.2uFのフィルムコンデンサが入っている。プリアンプのDC漏れが無いことが確実ならこれは省いてよい。2.2uFでは低域のゲインが不足する可能性もあるのでお金とケースに余裕がある人は10uF以上に変更して欲しい。

1uFのフィルムコンデンサ全てにパナソニックの0.1uFのECHU1H104GX9が並列にいれてある。ECHU1H104GX9の1uFのものは存 在しない為、変な音のしない1uFフィルムコンデンサ(Acronicsのポリエステルコンデンサ)にECHU1H104GX9を並列にいれることにより、ECHU1H104GX9風の高解像度な音にするという セコいやり方だ。コンデンサの並列は位相の乱れのため音が悪くなるという人もいるので、ケースとサイフに余裕がある人は、Evox-Rifaの PHE450を使用して欲しい。解像度についてはECHUにまかせるので1uFにはポリプロピレンコンデンサではなく普通の(白とか黄色の)ポリエステルコンデンサをつかってほしい。

電源部の1.8kΩと220kΩの分割抵抗以外は、全てニッコームRP-24を使用してほしい。

オペアンプにはFET入力のOPA2134を指定しているが、バイポーラ入力の njm2114 や lme49720 でも動作する。ただしその場合消費電力が大きくなる。バッファがついてないので njm4580等ドライブ能力の低いオペアンプは残念ながら使えない。

[2]製作

HPA_hiro.png

配線図

kmoi2_vr_c.png

市販のユニバーサル基板に収めるためにいくつか妥協した部分もあるが、このパターンの問題点を定量的に指摘できない人は全くこのまま作って欲しい(定量的にというのは何も難しいことではなく、帰還部分のインダクタ成分が問題となるとかオウムのようにくりかえすのではなく、実際にその成分をシュミュレータなどにいれて確認するというようなことだ(もちろん数式でもよい)。
パターン設計技術を経験とかノウハウとかいって秘密にしたがる個人業者や、引き回しを工夫しなくてもいいように大きなアースバーをつけてるのを宣伝してる メーカーとかがあるが、パターン設計も普通の回路設計となんらかわらない。オームの法則を適用してみるだけで基板の性能はぐっと良くなる。

信号ラインの電流が小さい部分に注意する必要がある。たとえば 10nA の音声信号が流れる部分では、その -96dB の 0.15pA 以上の外部変動を受けると音質の低下の原因になることが十分予想できる。そのため、オペアンプの入力端子から次の部品(入力抵抗あるいは発振防止用コンデ ンサ)の線は極力短くする。今の時代、シュミュレータで動作中の各配線の交流電流をチェックしておけば不用意な配線を容易に防ぐことができる。

[3]性能

RMAAの結果を示す


Frequency response (from 40 Hz to 15 kHz), dB
+0.02, -0.17
Very good
Noise level, dB (A)
-109.2
Excellent
Dynamic range, dB (A)
109.3
Excellent
THD, %
0.0010
Excellent
THD + Noise, dB (A)
-96.8
Excellent
IMD + Noise, %
0.0020
Excellent
Stereo crosstalk, dB
-87.7
Excellent
IMD at 10 kHz, %
0.0034
Excellent
General performance
 
Very good


このデータをとったHPAは入力コンデンサを10uFに増やしてあるがやはり低音の低下がみられる。
THD+Nは -96.8dB 以上とCD音質(-96dB)を満たしてる。
IMD+Noiseが 0.0020% とCD音質(0.0015%)にわずかに足りない。

聴感上は、十分にCDが聴ける音質に仕上がってる。
電池と電源アダプタの音質の差はきわめて少なく、解像度や雑さの差は全く感じられない。

オペアンプ1個の回路でこの音質になるというのは cmoy氏の発想のすばらしいさによるところが大きい。

cmoyアンプはアースのインピーダンスが高くて音が悪くなるとか、非科学的な発言をする人が今でもいるが、アースのインピーダンスというのがどことどこの間の インピーダンスを指してるのかわからない。電源電位を基準にすればアース電位は変動するが、アンプは変動したアース電位を基準に出力電圧を決めるので音が 悪くなる理由は全くない。アース電位を基準にすれば電源電圧が変動するがその変動はオペアンプの大きなCMRに吸収される。
cmoyアンプの音が悪いとおもったら自分の技術を見直すことだ。この発言は発言した人の作例のアース配線がいいかげんでアース配線内部で電位差ができ ちゃってるという意味にしかとれない。電源ラインを基準としてアースラインのインピーダンスを語ってるとしたら、今回のアンプはまさにアースのインピーダ ンスが高いアンプだ、だが、回路的にも 音質的にも全く問題ない。

注意
このヘッドフォンアンプには電流保護回路がないので、フルボリウムで小型イアフォンを繋いで壊さないように注意して欲しい。



2011.11.16 追記
音質に対する懸念から保護抵抗をつけてなかったが、誤って24Vの電源アダプタをつなぎ、フィルター回路のトランジスタを焼損させてあげく、ヘッドフォンを破壊してしまうという重大事故が起きたため。フィルター回路のトランジスタを大きなものに変えるだけではなく、100Ωの保護抵抗をつけることにした。回路図と実体図をさしかえた


2011.10.29 sけいし (s_keishi@yahoo.co.jp)

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