ベリンガーヘッドフォンアンプHA400のオーディオ化改造

behringer_ha400


Behringer の 4chヘッドフォンアンプ HA400 mircroamp を買いました。 オペアンプが5個も入っててケースも電源もコネクタも付いて1480円という値段に惹かれて買ってしまいました。このアンプ4人で演奏をあわせるためだけのもので設計も音質も到底オーディオ用ではありません。PCのイアフォン端子のほうがましかもしれません。
オーディオ用として買ってしまったので、回路を出力コンデンサ無しに変更し、最小限の部品を変更することによりオーディオ化を試みました。変更によりヘッ ドフォン2台しか使えなくなりましたが、拙作のヘッドフォンアンプ吟影003にさほど劣らぬ音質となったので改造手順をまとめてみました。
(さほど劣らぬと書きましたが、そのわずかな差に資金と労力をつぎ込むのがオーディオの世界なのをお忘れなく)

<改造>

改造後の写真が下 以下部分ごとに解説する。

[1]カップリングコンデンサの変更と電源フィルタコンデンサにフィルムコンデンサを追加しさらにIC5にパスコンをつける。


C7、C8の積層セラミックコンデンサを取り外し 0.1uF50VのPLMCAPを各々2個づつ付けた。

C6の電解コンデンサと並列に0.1uF50VのPLMCAPを1個つけた。



IC5の上に 0.1uF50VのPLMCAPを瞬間接着剤ではりつけ、VCC(8ピン)とVEE(4ピン)との間に配線してパスコンにした。

20pFのチップコンデンサ2個をはずした。


(費用)PLMCAP は 秋月で一個70円。 70円x6 420円


[2-1]フィルターコンデンサとch4の出力コンデンサのプラス側(ch4の出力端子のGND)を接続。




ch4のコネクタのGNDをC6の+側(CT電位)に接続

[2-2]入力のアースをGNDからCT電位に変更

入力端子のGND側はCT電位に接続しないといけない。

元の入力プラグのGND側は-に繋がってててはずせそうに無いので、チャンネル4の端子を入力端子として使用することにした。([2-1]でGND側はCTに繋がっている)。

L,Rの端子に繋がっているアンプの出力を切るために、R7、R8の出力抵抗を取り外した(チャンネル4は使用不能になった)。
入力端子のLをチャンネル4の端子のLに、入力端子のRをチャンネル4の端子のRに接続した。
チャンネル4の端子が入力端子となり、元来の入力端子は使用不能になった。



[3]中点電位の電流バッファの作成とch1、ch2への接続。


IC5の入力側の10kΩを取り外し、IC5をCT電位のバッファ(フォロワー)にした。



CH1とCH2の出力コンデンサを取り外した後(赤丸)、
CH1とCH2のコネクタのGNDににIC5からの出力を接続した(矢印)。

[4]47Ωの出力保護抵抗をバイパス

チャンネル1と2をヘッドフォン出力として使うことにした。音質がさほど問題でないヘッドフォンアンプには、出力と直列にヘッドフォンの保護のための抵抗が 入ってることが多い。HA400も47Ωの抵抗が入っていた。オーディオ音質を目指すにはこれは邪魔なので取り外してジャンパー線で繋いだ。



CT電位フォロワー(ch4)のボリウムを最大にしても、フォロワー出力と信号出力の間に100mV程度のオフセットが出た。このままではローインピーダンス(16Ω)のイヤフォンで問題が出る可能性がある。ch2の出力抵抗を残しておいてch2をイヤフォン用にするとかグッドかな。
このオフセットは、出力ボリウムの最大付近で急激に大きくなるので、通常のヘッドフォン(32~64Ω程度)を使用する場合でも、音量を絞り気味(0.8程度)にして使うのがいいだろう。

中点電位フォロワーの最大供給電流が40mAしかないため、改造前より電流供給能力が半分になった。大音量時の音質に問題が出る可能性がある。フォロワのオペアンプ(IC5)をNJM4556Aに交換すると良いかもしれない。

[5]ACアダプタにリップルフィルタを追加

[4]までの改造で、420円(PLMCAP6個)の出費で十分高音質になったのだが、拙作ヘッドフォンアンプ吟影003と比較すると静寂さに劣る。そこでACアダプタケーブルの途中にリップルフィルタをつけた。
回路はこれ



リップルフィルタ部品リスト

トランジスタ 2SC3421Y           25円x2 (4個100円)
ダイオード 1N4148             2円x2 (50本入り100円)
抵抗 1.8kΩ 1/4Wカーボン  3本   1円x3   (100本入り100円)
コンデンサ ルビコンPK 470uF 25V 4本  20円x4
ユニバーサル基板 Cタイプ          60円x1
(以上秋月)
小型タッパー                   35円 (3個105円)
(100円ショップ)
合計                                232円

改造費合計 652円


<結果>

[1]RMAAの結果

ASUSのサウンドカードは2Vrmsが0dBのようなので、手持ちの差動アンプ(+6dB(ゲイン2倍))を接続して測定した。この結果はヘッドフォンアンプの出力0dB(1Vrms)の結果の結果となる。

(1)負荷なし
結果はここ
Frequency response (from 40 Hz to 15 kHz), dB
+0.03, -0.20
Very good
Noise level, dB (A)
-104.1
Excellent
Dynamic range, dB (A)
104.2
Excellent
THD, %
0.0042
Very good
THD + Noise, dB (A)
-84.9
Good
IMD + Noise, %
0.0079
Excellent
Stereo crosstalk, dB
-92.8
Excellent
IMD at 10 kHz, %
0.015
Very good
General performance
 
Very good

(2)47Ω負荷
結果はここ
Frequency response (from 40 Hz to 15 kHz), dB
+0.03, -0.20
Very good
Noise level, dB (A)
-103.5
Excellent
Dynamic range, dB (A)
103.3
Excellent
THD, %
0.0055
Very good
THD + Noise, dB (A)
-82.6
Good
IMD + Noise, %
0.0096
Very good
Stereo crosstalk, dB
-61.6
Average
IMD at 10 kHz, %
0.020
Very good
General performance
 
Very good
良好な結果である。
ヘッドフォンアンプは3線(マイナス線共通)で出力するため電流を流すとクロストークの低下は避けられない。

(基準)差動アンプのみ
結果はここ
Frequency response (from 40 Hz to 15 kHz), dB
+0.02, -0.11
Excellent
Noise level, dB (A)
-108.6
Excellent
Dynamic range, dB (A)
108.4
Excellent
THD, %
0.0006
Excellent
THD + Noise, dB (A)
-99.0
Excellent
IMD + Noise, %
0.0014
Excellent
Stereo crosstalk, dB
-97.2
Excellent
IMD at 10 kHz, %
0.0011
Excellent
General performance
 
Very good



本体 1480円+改造費 652円で満足のいく音になった。
njm4580を採用していることとベリンガー社製で音質的に優れた部品を使用しているだろうということとから予想どおりである一方、改造だけで拙作のヘッドフォンアンプ吟影003に近い音質が達成できるということが予想外だった。



(後記)
音質は吟影003とほぼ互角です。しかし完全に同等とはいきません。Evox-Rifaのポリプロピレンフィルムコンデンサやニッコームの金属皮膜抵抗や洗練された配線技術による音の差を味わってみたい方はぜひ拙作のヘッドフォンアンプ吟影003にチャレンジしてください。

改造HA400吟影003との差は、大筋としてはルビコンのPLMCAPを使ってるかEvox-Rifaのポリプロピレンフィルムコンデンサを使ってる かの差のような気がします。ルビコンの音をとるかEvox-Rifaの音を取るか好みの分かれるところかもしれません。PLMCAPの音の方が音楽的で好 ましいと感じる方が多いかもしれません。

改造HA400より吟影003のほうがきめ細かい音がするのは、コンデンサだけでなく抵抗の違いもあるでしょう。HA400に使われているようなカーボン抵抗はどうしてもきめ細かい表情が消えてしまいがちです。

ルビコンのPLMCAPは音がいいコンデンサです。バイアス特性” “うなり音特性” “高調波歪み率”等が優れているというのも納得です。フィルムコンデンサにありがちな高域のクセが少ないです。私にはEvox-Rifaのコンデンサの方がさらにクセが少ない気がするという程度の差です。



(たわごと)
ルビコンの電解コンデンサは音がいいです。最近のオーディオ用電解コ ンデンサは高周波特性を改善しているものが多いのですが高域にクセのあるものが多すぎます。高域特性が悪いならフィルムコンデンサの方の容量を上げればい いだけなので変な音は出さないで欲しいです。そのへんルビコンの通常電解コンデンサは安心して使えます。まぁ OSコンみたいにフィルムコンデンサの領域 まで一個でカバーとなるとまた別ですが。

NJM4580は奇跡的に音の良いオペアンプです。新作のMUSEシリーズも、ナショセミのLMEシリーズも、テキサスのOPAシリーズもなんだかなぁと いう感じです。素人的発想では電流源の基準電圧にツェナーダイオードを使うのをやめていただければ良いのだと思うのですが、そう甘くないのかなぁ。。。。

CaZrO3系誘電体の積層セラミックコンデンサの大容量化がすす み、村田製作所やTDKから100nFクラスの製品が供給されてきています。まだ少しクセのある音がしますがオーディオ用に使えるものが出るのも時間の問 題でしょう。雑音発生源以外の何者でもないBaTiO3系誘電体の積層セラミックコンデンサの蔓延で普及型小型オーディオは長らく冬の時代でしたが小型 オーディオが本来の音質を取り戻す日まであと少しのようです。

2012.10.30 sけいし

2012.11.01 RMAAの結果を追加

2012.11.03 書き忘れていた、IC5の2個のチップコンデンサの除去を追加。


このページの内容に問題等ありましたら sけいし(skeishi@yahoo.co.jp)まで連絡願います。

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