電流駆動アンプのすすめ


===原理的に正しいスピーカー駆動の方法===


電流駆動アンプについてまとまった記事は、UTiCd,氏が書いているので改めて書かずに解説だけしよう。

1.原則論
大事なのはこの一行だ。
”スピーカーのボイスコイルは電流駆動するべきものである、と言ってしまっても過言ではないでしょう”
原理的に正しいことをしてこそ正しい結果が得られるということは科学の基本だ。スピーカーを電流駆動すべきでないと言う人がいたら正しい結果を望んでいないか科学を信じてないかどっちかだろう。

2.電流駆動にすると起きる問題
電流駆動すればいいのなら、現在のアンプを電流駆動アンプに置き換えればいのか?というとそうはいかない。
UTiCd氏によれば電流駆動アンプに置き換えた場合の問題は3つある
(1)スピーカーの低域共振周波数付近での共振がおさえられない。
(2)スピーカーの周波数特性が電圧駆動用に最適化されてるので正しい周波数特性が得られない。
(3)スピーカーをつながない状態にされると、出力は電源までクリップするので危険(スピーカーとアンプを分けるのには向いてない)、高い周波数まで安定な電流出力アンプは作りにくい


ま ず、(1)の問題から解説しよう。共振が起きた場合電圧駆動アンプでは電磁制動によって抑えることができる。だから電圧駆動アンプはすぐれてるという議論 が展開されてる。しかし、共振はおさえられていても入力信号が正確に音声信号に変換されてるわけじゃないのだ(この件についてはnabe氏が実験している)。電流駆動も落第だが電圧 駆動も落第なのだ。 著者が考える結論はこうだ。
(電圧駆動でも電流駆動でも)マグネチックスピーカーを低域共振周波数付近で使用してはいけない
デジタル式の高性能なチャンネルデバイダーが安価に作れる今日、低域共振周波数以外の領域だけをスピーカーに印加するのは容易なのだから低域共振周波数を避けて使えばいいだけだ。

つぎに、(2)の問題だ。
電 圧駆動用に設計されたスピーカーは、高域になるにしたがい電流値がへっても音圧がへらないように、かつ共振も電磁制動が利いたときにちょうど良いように調 整されてる。というようなことが書いてある。もし電流駆動が主流になることがあればこの辺は改善されるだろう。電圧駆動用ユニットの電流駆動での使用を考 えたばあい、低域共振周波数付近は使うべきではないと(1)に書いたので、高域特性だけが問題だがこの程度はイコライザーで調整すればいいだろう。 

最後に(3)の問題だ。
出 力が電源までクリップする件についてはソケットを工夫したり安全回路をつけたりすればいい(アンプの電源電圧自体はそう高くないのだが、大型アンプの電源 コンデンサが放電するとちょっとおっかない)。高い周波数っていってもせいぜい20kHzなんで技術的に作れない理由は全く無い。現在アンプ作りを趣味と してる人々が電流帰還アンプを作った経験が無いというだけの話だ。
リビングルームで使う50W100Wクラスのアンプを作るのは難しいし断線時の危険もあるがデスクトップでつかう8W15W級のアンプなら作るのも簡単で危険性も低い。著者は自分のPC用に8Wクラスの本格的電流帰還アンプを製作し愛用している。

3.電圧駆動の際に起きてる問題。
UTiCd氏のまとめた電圧駆動の問題点は3つだ
(1)熱圧縮の問題。
(2)ボイスコイルが中心からずれた際に非線形の変調をうける。
(3)高域ではインピーダンスが減少するが、ボイスコイルの位置でインピーダンスの減少量がちがう。
電 圧駆動スピーカーが主力の現在(1)-(3)の対策は可能な限り施されてるはずだが、こうして問題点としてあがるのは多分根が深いからだろう。もちろん PCスピーカーに使われるような普及型スピーカーユニットではこのような問題に有効な措置がされてることはあまり期待できない。電流駆動アンプはこれらの 問題に有効な解決策を与える。

3.結論
UTiCd氏の結論は
” さて、いままで長々と、一番簡単なタイプの電流出力アンプを紹介してきましたが、私は電流出力アンプを薦めているのでしょうか?
 結論としては、はっきり言うと、薦めません。難しい点が多すぎるからです。”
というものだが。
著者の結論はこうだ。
チャ レンジしよう! 難しいと思うのは電圧駆動アンプがメジャーだったからで、いまや電流駆動アンプを使うのに大きな障壁は残ってない。密閉箱+マルチアンプ +チャンネルデバイダー(PC+マルチ出力サウンドカード+チャンネルデバイダつきmp3プレイヤーソフトなら安価に入手できる)をそろえるだけで”原理的に正しい”スピーカーシステムが作れるのだ。やらない手はない! もちろんフルレンジ一発のスピーカーならマルチアンプもチャンネルデバイダーもいらない。
スピーカーを電圧駆動した際の問題点を正確に補正してあるような高級オーディオシステムでは電流駆動の効果は期待できないかもしれない。しかし、普及型オーディオやPCスピーカーなど安いスピーカーシステムになればなるど大きな改善効果が期待できる。


2007.07.31 sけいし(skeishi@yahoo.co.jp)
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